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線と板の主張

シュウによる著述

 

学生時代、バンドのドラマーがスタヂヲに入るなりバシャバシャ叩き始め、他のメンバーが準備してるのも構わず一人で盛り上がってゐるのが評判悪かった。

楽士は、担当楽器によってその準備にかかる手間はそれぞれ違う。
まぁ本来ドラマーは、何もない場所に自分で楽器持ってきてセットして、から始めるとなれば一番手間のかかるパートである。スタヂヲのやうにあらかじめセットしてあれば別だが・・・。
運搬に人の手を借りねばならぬこともしばしばで、まぁ私はもぅトシだし、腰も肩も腕も心配なので手伝わんやうにはしてゐるが、ウンウン唸りながら階段を行き来するドラマーを気の毒に思ふこともたまにある。

ギタリストも、数本のギターを持ち込み、またえへくたーも多用するとあらば、その手間はなかなかのものがある。

いちばん楽、といふか身軽なのは、やはりピヤニストで、彼ら彼女らはだぃたぃ会場に置いてあるピヤノを使う。そのピヤノが良いものか悪いものかはまた別問題として、その楽器を使わざるを得ない点はリスキーではあるが、彼らが楽器を運搬する苦労や手間を一番知らないのも確かだ。

私はベーシストで、しかも4弦ベース一本しか使わんのでまだアレだが、弦がたくさんある人やいっぱいサオを使う人なんぞは、調弦もまた一苦労なのである。その調弦の手間もまた、他のパートが知り得ない手間となり、まだ調弦が済んでないのに他にガチャガチャ演り始められると、「Hey !!」とは言ひたくもならう。

違うパートの楽器同士は、なかなか分かり合えない。

話は全然変わるが、以前調理人として仕込みに入ってゐた店で、とあるアマチュアのバンドのリハが始まる、といふ。『脇で仕込みしてるけど気にしないでね〜』とか言って任務を遂行しながら、何とは無しにバンドの音が耳に入っては来てゐた。

ところがこの人たちが、いつまで経ってもリハを始めんのには驚いた。もぅ全員セッティングが終わってゐるのに、それぞれが勝手に音を出し、それそれの世界に没頭してゐる。「これ、なに待ち?」と思はず声をかけてしまったほど、だった。

タイム・イズ・マニィ。
時は金で買えるのである。
いや、金払って場所借りてンなら、さっさと始めんと損だらうによ、と思ふ私は吝嗇に違いない。